空調メーカー大手のダイキン工業は早くからグローバル展開を進め、今や世界でもリーディングカンパニーのポジションを占めるまでに成長した。将来を見据えて同社が取り組むのが、社内外の「協創」による技術開発。同社独自の産官学・包括連携を進めている。加えて、同社が重視するのがDXを推進する人材の育成だ。そのために大阪大学と連携し「ダイキン情報技術大学」も設立した。受講する社員は2年間、業務を行わず学びに集中できるという。その狙いや進捗について、同社執行役員の河原克己氏に語ってもらった。

※本コンテンツは2022年4月20日に開催されたJBpress/JBpress Digital Innovation Review(JDIR)主催「第5回ものづくりイノベーション」の特別講演Ⅰの内容を採録したものです。

ダイキン工業独自の産官学・包括連携を進める

 現会長の井上礼之は、2004年に空調事業がグローバルナンバーワンになった頃から、研究開発のコア拠点の必要性があると発案しました。まず、それまで国内3カ所に分散していた開発拠点を1カ所に統合し、全技術者が1つの施設でコラボレーションできるようにしました。

 また、技術の進歩が速い時代に自前主義ではスピードが遅くなります。そこで、さまざまな企業や大学、研究機関との連携・提携、融合を通じて新たな価値を、オープンな環境で作り上げる「協創」を技術開発の中心とするという思いで、大型の研究開発センター「テクノロジー・イノベーションセンター」を2015年11月に大阪府摂津市に設立しました。私は同センターの設立準備室長も務めました。大学の先生方に駐在してもらうフェロー室、技術者同士がフェース・トゥ・フェースで対話ができるワイガヤステージなど、社内外の協創を実現する工夫を取り入れており、開所後5年間で約10万人の来客をお迎えしました。

 当社の戦略経営計画「FUSION25」では「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」の3つを重点戦略テーマに掲げています。幅広い領域の挑戦を始めていますが、私たちの技術領域だけでは技術の幅が不足しています。そこで、国内外の大学、公的研究機関、ベンチャー企業との包括連携を重点的に進めています。

 中国の清華大学を含め、日本国内の8つの研究機関と包括連携ネットワークを構築しています。東京大学とは年間10億円・10年間の計100億円の契約、大阪大学や京都大学とは10年間・50億円規模の大型の連携をスタートさせています。

 当社の産学連携の特色は「個対個対応・課題解決型から、組織対応型・課題設定型の包括連携へ」に重点を置いていることです。これまでの産学連携は企業の研究者が大学の先生に研究委託をし、その解決策を返してもらうという個対個の課題解決型の研究が主でした。それに対して私たちが取り組んでいる組織対応型の連携では、営業担当者やマーケッターなども含め、全社員が一丸となり、また、大学側も、理学、工学だけではなく、社会学、経営学、哲学といった、さまざまな先生たちと議論することにより、課題設定(価値設定)から始めるものです。

 大阪大学とはともに「ダイキン情報技術大学」を立ち上げました。当社の新入社員から幹部まで、AI人材としてのDX教育に大阪大学の先生方の力を借りて運営を進めています。大阪大学と当社との「基礎研究段階からの産学共創 ~組織対組織の連携~」の取り組みは、第1回日本オープンイノベーション大賞「文部科学大臣賞」も受賞しました。