(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
5月26日、ドイツ人研究者のエイドリアン・ゼンツ博士がウイグル収容施設・内部資料を「新疆公安ファイル」として公開した。ウイグル人の虐待の事実や、収容者280人の顔写真、また「(囚人が)数歩でも逃げたら射殺せよ」とか「習総書記を核心とする党中央を安心させよ」などの、共産党幹部の命令内容が明らかにされた。
この情報を受けた世界14のメディアは、収容所リストの裏付け調査をし、専門家にも流出写真の鑑定依頼をした。毎日新聞は「情報の信ぴょう性と社会的意義から報道する価値があると判断した」。
この世界的なニュースに関しては、同日JBpressでも元産経新聞記者の福島香織氏が「中国はこれでもフェイクと言い張るのか? 『新疆公安文書』流出の衝撃」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70293)という記事を書き、詳しく解説している。
「中国はこれでもフェイクと言い張るのか?」というのは、この「公安ファイル」を目にした人全員が抱く感想であろう。これだけの動かぬ証拠を見せつけられれば、だれの目にも一目瞭然で、これを否定できる者がこの地球上にいようとは思われない。これでさすがの中国もぐうの音も出ないだろう。
と、思うのは罪悪感を持つ良識のある人間だけで、いるんですねこれが。
かれらは絶対に非を認めない
もちろん中国政府である。性懲りもなく、こう抗弁している。「反中勢力による新疆ウイグル自治区を中傷する最新の事例だ。うそやうわさを広めても世間は欺けず、新疆が平穏で経済発展し、人々も幸せに暮らしている事実を隠すこともできない」。
「これでもフェイクと言い張るのか?」というのはロシアも同類で、遺体が写されていても「フェイク」だと言い張った。
もうかれらはどんな証拠を示されても、絶対に認めないと決めているのである。いったいどういう神経なのだろう、と思うが、われわれはもう、かれらはなにがあっても絶対に自らの非を認めることはない、と知るべきだろう。一国のなかでは、万引きの現場を見つけられた者が、いやおれは盗ってない、と言い張っても、刑罰を免れることはないが、しかし国際間でこれをやられてはどうしようもない。