椰子の葉影ですやすやと寝ている猫。起こさないように、そっとシャッターを押したのですが、気づかれてしまいました。

 様子のよい店に入ったら、「この店はポンチャの名店だよ」と、隣の席のカップルが話しているのが聞こえてきました。ポンチャ? なんだろうと、店内を見渡せば、ポンチャを説明するポスターが貼ってありました。

「ポンチャ発祥の地は、ここカッマラ・デ・ローボスです。マデイラ島のサトウキビから作られたラム酒が主体です。当初は、ラム酒とキビ糖、レモンジュースで作られていましたが、いまでは、オレンジやパッションフルーツのジュース、蜂蜜などを好みに合わせてアレンジしています」

 店の若いマスターが、蜂蜜入りがオススメというので、それをいただきました。口当たりがよくて、つい、ぐびっといってしまいましたが、はっきりいってアルコールが濃いです。

 この猫は、頭を何度もゴツンゴツンとしてきました。「おねえちゃんの帰りを待っているんだけど、知らない?」と言っているような気がしました。

「遊びに行っているのかねぇ」と話しかけると、頬を擦り寄せてきました。そこで気がついたのですが、ヒゲが整えられているというか、切られているではありませんか。

 どうして大事なヒゲを切ったのかを聞きたいと思い、「わたしも君のおねえちゃんに会いたいよ」。そう言いながらしばらくこの場所で猫を撫でていましたが、さっき飲んだポンチャが回ってきたのか、眠くなってしまいました。