先週は、ストレス耐性を高めるセロトニン神経について紹介したが、今回はずばりストレス解消について。お酒、スポーツ、笑い、様々なストレス解消法があるが、東邦大学医学部の有田秀穂教授が提唱する最高のストレス解消法は、涙だ。

今年も泣き相撲大会開催、浅草寺

泣くことはストレス発散の特効薬(東京・浅草寺の泣き相撲大会で)〔AFPBB News

 目にゴミが入って流す涙ではなく、感情が高ぶって流す情動の涙である。

 泣くことがストレス解消になることは誰もが薄々感じてはいるものの、それが脳科学的に見てどのような意味を持つのかは不明瞭だったが、今回、この点を有田教授に明確にしてもらった。
 

KYは、内側前頭前野の衰えだ

 涙を流す指令を出す脳は、内側前頭前野にある。この脳は「共感脳」とも呼ばれており、人とのコミュニケーションにおいて重要な働きを担っている。人間の基本的なコミュニケーションツールは言語だが、この脳は、言語を使わなくても、目つきや表情、仕草、声のトーン等で相手の感情や心を読み取る能力を持つ。非言語コミュニケーションだ。

 この働きが優れていると、人と接するだけで相手の心や感情が分かる。言葉で言っていることと本音が異なることを見抜くのも、この働きによる。第六感も、ここの働きによるものと推測されている。

 近年よくKYが問題視されるが、これは相手の気持ちが読めないことに由来する。つまり共感脳が弱まっているのだ。

 その背景には、携帯電話やパソコンの普及がある。そこでのコミュニケーションツールの主体は文字なので、相手の目線や表情や仕草の変化が分からない。直接対面と比較するとあまりにも情報量が少なすぎることによって、非言語コミュニケーションを司る内側前頭前野の働きは低下し、KYが増加していると、有田教授は警鐘を鳴らす。

 電車の中で化粧をしたり床に座る若者が増えている。通常はそこに注がれる周囲の冷たい視線や嫌な表情を察知できるのだが、共感脳が衰えると、これができなくなる。つまり、彼らは嫌がられることをあえてしているのではなく、嫌がられていることが分からないのだ。