・ロシアによる他の主権国家への一方的な軍事力行使と制覇を止められない米国に対して、中国が米国の力が衰えたと判断するのは自然である。同時に中国指導層は中国の総合国力が増大したことへの確信を強めている。

・ロシアのウクライナ侵略に対して、米国と西欧諸国は結束して非難を強めたが、軍事がらみの行動をどこまでとるかについては一致をみていない。その背景には、近年のNATO(北大西洋条約機構)内部での「戦略的自主権」という新たな概念の成長がある。この概念は今回のウクライナ戦争では「戦略的優柔不断」という傾向を示した。

・中国指導層は、米国とその西欧同盟国のこうした現状を見て、アジアでの中国による台湾侵攻という緊急事態でも米国が正面からの軍事介入で台湾を支援することをためらう可能性があると判断しつつあるようだ。その結果、中国共産党にとっての積年の悲願である台湾併合を武力行使してでも断行することへの意欲はかつてなく高まったと言える。

 米国とNATOの対応については、3月24日にバイデン大統領を迎えてベルギーのブリュッセルで開かれるNATO首脳会議の動向が注視される。米欧諸国によるこの集団防衛態勢は、かつてソ連支配下にあったポーランドやハンガリーなども含めて、米国主導の下、同盟の絆を強めているかに見える。だが、今回のウクライナ戦争では全体としての明確な対応がとれていない。しかもウクライナはNATO加盟国ではないとはいえ、軍事支援の実施も合意ができていない。