吉林省図們市を走る鉄道(写真:ロイター/アフロ)

 統一房は、北朝鮮や韓国の服役者が収容されている中国の刑務所だ。東北3省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)の大都市である瀋陽や大連、丹東や吉林などには多くの刑務所や看守所がある。刑務所は実刑判決が下された服役者を収監する施設で、看守所は実刑を受ける前の服役者が収監されている拘置所のようなものである。

 2021年10月18日、吉林省にある吉林刑務所を脱獄した北朝鮮人のチュ氏が公安当局に逮捕された。脱獄から41日目のことだった。模範囚だったチュ氏は2回にわたる減刑を受け、2023年8月に出所する予定だった。出所を1年10カ月後に控えたチュ受刑者は、なぜ脱獄を強行したのだろうか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 2014年7月頃に脱北したチュ氏は、中国吉林省図們市の3軒の民家に押し入り、強盗や窃盗を働いたことから逮捕され、懲役11年3カ月、罰金1万6000元の刑が下された。

 吉林刑務所には、10人ほどの北朝鮮人服役者が収監されていた。

 ほとんどが脱北後、民家を荒らすなどの不法行為を犯して逮捕された受刑者だった。脱北しただけの人は逮捕されると吉林看守所や丹東看守所に収監され、北朝鮮保衛当局(秘密警察)に引き渡される。

 平安北道(ピョンアンプクト)や平安南道(ピョンアンナムド)からの脱北者は中国遼寧省丹東看守所に、咸鏡北道(ハムギョンプクト)や咸鏡南道(ハムギョンナムド)、両江道(ヤンガンド)などからの脱北者は吉林看守所に収監される。

 不法行為で逮捕された脱北者は、中国の地方裁判所で裁かれ、刑期を終えてから北朝鮮に送還される。北朝鮮に戻っても、再び裁判にかけられ刑が言い渡される。チュ氏の場合も、11年3カ月の刑期を終えて北朝鮮に引き渡された後、北朝鮮でも刑期を務めることになるのは確実だった。