LG電子の工場で働く労働者。好待遇を求めて世界に出たいと考える若者は増えている(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 韓国の中道系野党「国民の党」の大統領選挙候補、安哲秀(アン・チョルス)氏は、2021年1月11日に開かれた討論会で「韓国は来る2055年に、国民年金が枯渇するだろう」と明言した。

 安候補はさらに、「2088年になれば、国民年金の累積赤字がなんと1京7000兆ウォン(約1630兆円)になる。これをそのまま放置することは犯罪行為だ」「日本は100年後にも子孫が国民年金を受け取ることができるか、毎年チェックしている。我が国もそのような構造に変更するよう努力しなければならない」と述べた。

 政治家がこのように述べれば、自国に将来を見出せず、海外移住を考える若者が増加してもおかしくない。日本と同様に、韓国でも年金に対する悪い噂が後を絶たない。日本以上に受給金額が少なく、将来確実に受給できるという信頼性にも欠けるからだ。

 韓国経済は昨年、国内総生産(GDP)が成長したことで、世界10大大国の仲間入りを果たした。ただ、グローバル統計サイト「Numbeo」によると、2021年の韓国の「生活の質」指数は130.02と評価対象国83カ国中42位である。若者の就職難が続き、自殺者も増加、自国を脱出したいと考える韓国の若者は少なくない。

【参考資料】
Quality of Life Index by Country 2021(https://www.numbeo.com/quality-of-life/rankings_by_country.jsp?title=2021)

 事実、日本の厚生労働省が発表する統計を見ると、日本国内における韓国人労働者数は、データの存在する2008年から2020年まで前年の数字を下回ったことがない。日本に移り住んで就業する韓国人は、年々増加している。

 単純に、韓国の若者の間で、日本での就労が人気となったことも韓国人労働者増加の理由ではある。

 韓国では、財閥に勤めることができれば高給が期待できるが、それ以外は給与も周囲の評価も落ちる。また、日本に行けば、社会保障制度を見ても、韓国より充実している。もちろん、単に日本が好きだという理由で日本での就労を希望する韓国人も多い。

 だが、近年の増加背景には、文政権が「K-MOVE」と題して若者の海外就労を斡旋していることも、大きく影響しているように思える。