――結果は重大ですが悪質性はなく、なんだか気の毒な事故ですね。このような事故態様で、なぜ禁錮110年という判決が出たのですか?
Tsuzuki 彼に下された判決は、合計27つの罪状(死者4人+負傷者23人)でした。まず、死亡者が4人なので、それぞれへの「交通殺人」とみなされ、4人分の罪、つまり4倍の罪状になっています。さらに、「一級傷害罪」が6人分、「一級傷害未遂罪」が10人分、「危険運転致傷罪」が2人分、「危険運転罪」が1人分、さらに、不注意による死亡事故が4人分(前出の殺人と重複)という感じで、刑がどんどん加算されていきます。注目すべきは、交通事故でありながら、『交通』や『運転』といった文字のない通常の「殺人罪」や「傷害罪」が適用されている点ですね。おそらく、「緊急退避所を活用しなかった」ことが大きく問われたのでしょう。
裁判で泣いて被害者に謝罪した被告
――被告自身は、裁判でどのように主張していたのですか?
Tsuzuki アギュレラ氏本人は、裁判で「神は、彼ら(被害者)ではなく、この私の命を奪って欲しかった・・・」と泣いていました(以下の動画に刑事裁判での被告の姿あり)。
私の印象では真面目そうな青年で、事故直前に最善の努力をしたのではないかということは推測できます。経験不足による不幸な事故という感じがしますね。ちなみに、弁護人は「禁錮20年が相当」と、減刑を要求しています。酒酔いやスマホ、薬物などの故意犯ではないですからね。
――日本の交通事故裁判とは量刑が全く違いますね。
Tsuzuki 2012年に関越道で起こった長距離バスの事故では、明らかに運転手の過失で乗客7名が死亡し39名が重軽傷を負いましたが、懲役9年6カ月でした。15名が死亡した2016年の軽井沢のスキーバス転落事故は、被疑者死亡で不起訴ですけれど、もし生きていたとしても10年を超える判決は出なかったでしょうね。