アンドリュー・クオモ氏(左)とクリス・クオモ氏(写真:AP/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 日本でも幅広く視聴される米国のCNNテレビの看板キャスター、クリス・クオモ氏が12月4日、解雇された。実兄の前ニューヨーク州知事、アンドリュー・クオモ氏が一連のセクハラ容疑などで刑事捜査の対象となっているのに対して、クリス氏は記者の立場を利用して、兄を助けるための情報収集や通報を行った。それらの行為が不適切とみなされての解雇処分だった。同時にクリス氏自身のセクハラ容疑も明るみに出た。

 民主党の有力な政治家と有名キャスターの兄弟がともに不正を追及されて「落ちた偶像」となったこの事件は、バイデン政権に思わぬダメージを与えかねない政治スキャンダルとして波紋を広げている。

政治家一家の出身のクリス氏

 CNNは同4日、自社のニュース記者、キャスターを務めてきたクリス・クオモ氏の解雇処分を発表した。同社のジェフ・ザッカ―社長は「新たに明るみに出た情報によりクオモ氏の行動はジャーナリストとして不適切であると判断するに至り、同氏を解雇した」と述べた。

 クリス・クオモ氏は米国の主要テレビ界で活躍してきたベテランの記者・キャスターで、2013年にABCテレビからCNNに移った。CNNでは国内、国際の両方の報道に関わり、最近では同局の看板ニュース番組「クオモ・プライムタイム」のアンカーとして連日活躍してきた。

 クリス氏は現在51歳。父は元ニューヨーク州知事のマリオ・クオモ氏、兄は今年(2021年)8月まで同州知事だったアンドリュー・クオモ氏という政治家一家の出身である。