新型コロナウイルスに関する情報は、"インフォデミック"と呼ばれるほど真偽含めて大量に入り乱れている。情報の伝え手側は、何に気を付けて発信しなければならないのか? 『ネット炎上の研究』著者・山口真一 国際大学GLOCOM准教授に、讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が聞く(全3回の第3回)。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第73回。

 新型コロナウイルス感染症をめぐっては、さまざまな情報が大量に氾濫しています。「われわれは感染症だけではなく、“インフォデミック“とも戦っている」(WHOテドロス事務局長)のです。このような中で、情報の伝え手側に求められるのは何なのでしょうか?

 すべての報道・情報発信にいえることですが、とくに新型コロナウイルスのように命にかかわるテーマについては、「いかに正確に発信するか」「それをどうやって効果的に伝えるか」という2つのポイントがあると思います。計量経済学というデータ分析手法によってネットメディアなどを研究されている経済学者の山口真一先生に、正確で効果的な情報発信法について伺いました。

山口真一(やまぐち・しんいち)氏
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授 1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学。研究分野は、ネットメディア論、情報経済論、情報社会のビジネス等。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。KDDI Foundation Award貢献賞、組織学会高宮賞、情報通信学会論文賞(2回)、電気通信普及財団賞、紀伊國屋じんぶん大賞を受賞。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)、『ネット炎上の研究』(勁草書房)などがある。他に、東京大学客員連携研究員、早稲田大学兼任講師、日本リスクコミュニケーション協会理事、シエンプレ株式会社顧問、総務省・厚労省の検討会委員などを務める。

メディアの報道姿勢の問題点

讃井 情報の正確性については、まさに本連載を始めた動機のひとつです。コロナ禍において、既存のマスメディアの報道が正確でない場合があります。私の実体験でいえば、新型コロナ感染症に関してテレビ・新聞の取材を受けてきたこの1年半、記者やディレクターの頭の中にストーリーがあって、それに沿った話をしてほしいという意図がみえみえだったことがしばしばありました。私の発言が一部切り取られ、あらかじめ決めていたストーリーにあてはめて使われ、結果的に誤解を招きかねない報道の片棒を担いでしまったケースもありました。だからこそ、既存のマスメディアを通さずに情報発信をしようと、本連載を始めたわけです。