2017年10月、東南アジアに駐在していた北朝鮮貿易代表と、その家族が死亡した。交通事故として処理されたが、最近になって報復殺人事件だという説が浮上した。事故で亡くなった人物の父親、ソン・テビン氏が1990年初めに行った英雄的な犯罪に起因するという。どのような英雄的犯罪行為があったのだろうか。
(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」
(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)
(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)
1990年初め、北朝鮮の国営企業「スジョン貿易会社」の支社長としてマカオに駐在していたソン・テビン氏は驚くべき情報を入手した。旧ソ連の極東軍管区で、一度も使われたことがない軍用トラック「KAMAZ(カマーズ)」2000台が、1台当たり5000ドルで売りに出されるというものだった。
当時、北朝鮮軍は砲兵部隊の機動力を高めることに全力を傾けていた。北朝鮮政府はすべての貿易会社に対して、砲兵部隊が使用する大型軍用トラックを入手するための外貨を稼ぐことを求める緊急通達を出していた。
緊急通達に頭を抱えていたソン・テビンにとって、軍用トラックの情報は思いがけない僥倖だったが、情報を確認したところ、正常な貿易手続きによる売買ではないことが判明した。
米国と旧ソ連が交わした軍縮の一環で処分が決まった軍用トラックを、極東軍管区の将官が横流しして利益を得るため、安値で売ろうとしていたのだ。
ここで、ソン・テビンはある詐欺行為を思いついた。
ソン・テビンは仲介人を通じて旧ソ連の極東軍管区将官たちと連絡を取り、KAMAZ軍用トラック2000台をすべて購入したいと切り出した。極東軍管区将官は、代金1000万米ドルを支払うように要求したが、ソン・テビンは初めての取引の際に用いられる慣行でもある信用状取引を要求した。