(北村 淳:軍事社会学者)
米国国防総省は、先日公表したいわゆる中国軍事力レポートにおいて、艦艇保有数が355隻を超えた中国海軍が数量的に世界最大の海軍の座を占めるに至ったと深刻な危惧の念を表している。
米海軍の戦闘用艦隊に投入される艦艇数は、11月16日現在、294隻である。アメリカ海軍の戦力再興を目指した前トランプ政権は、米海軍の主要艦艇数を355隻以上に拡大することを義務化する政策を打ち出した。
ただし米海軍やシンクタンクなどの海軍戦略関係者からは、常識を覆すスピードで戦力拡大を続ける中国海軍や、復活しつつあるロシア海軍を念頭に置くならば、目標が355隻では少なすぎ、500隻は必要であるといった意見も少なくなかった。
結局、米当局が掲げた355隻という目標値はあっという間に中国海軍が達成してしまい、米国防総省の推測では2025年には中国海軍の主要艦艇保有数は少なくとも420隻に達するものとされている。これまで米軍情報筋やシンクタンクによる中国海軍戦力予測が常に過小評価であったため、場合によっては450隻に迫るかもしれない。