パリ・サンジェルマンのメッシ(写真:ロイター/アフロ)

 その午後のラスコルツ周辺には、しばらく目にすることのなかった試合前のざわつきがあった。

 バルセロナの本拠地カンプノウに宿敵レアル・マドリードを迎える大一番、クラシコ(「伝統の一戦」)。100%の観客収容が可能になったこともあり、あたりは人で溢れかえっている。規制のないクラシコ開催は、コロナ発生以降初めてのことだ。

 古いエレベーターで最上階に上がり、いつもの席に座った。下を眺めるとスタンドはかなりの観客で埋まっている。そこには長いこと失われていた熱気があり、忘れかけていた声援があった。

観客を取り戻したFCバルセロナの本拠地カンプノウ(筆者撮影)

 しかし足りなかったものがひとつある。少し前までこのスタジアムを虜にした10番の姿だ。

想像以上のバルサの凋落ぶり

 メッシがいればきっとなにかしてくれたはず――。いいところなくレアル・マドリードに敗れた後、そう思ったファンは多かったはずだ。ため息に包まれた帰り道、露店には去っていった10番のユニフォームが、当たり前のように並んでいた。

カンプノウそばの露店にはまだメッシの10番のユニフォームが並んでいる(筆者撮影)

 それから数日後、バルサのクーマン監督は解任された。順位は20チーム中9位。ポスト・メッシの時代のバルサの凋落は、誰にとっても想像以上だった。