メッシのいないカンプノウに行ってみると、いきなり“メッシ”に遭遇した。
最寄りの地下鉄駅からスタジアムへと歩いていく人々の背中に刻まれた10番の数々。たくさんのメッシが、試合前の小径を懐かしそうに歩いている。彼らが向かう先、そのピッチにもう10番の姿がないということを知りつつ。
メッシのいないバルサ
スペインリーグ開幕戦、バルサの本拠地カンプノウはコロナウイルスにより長らく無観客となっていたが、久しぶりにその扉を開いた。約1年半ぶりのことだ。
閑散としていたスタジアムに戻ってくる歓喜——本来ならお祝いだ。しかし辺りにフェスタの空気は漂わない。前週、メッシがバルサを離れることが決まった。1年半ぶりの記念すべき試合は、バルサにとってメッシのいない最初の試合となった。
久しぶりのスタンドにぎこちなく座る人々の表情は晴れない。通い慣れたいつもの席に座り、目の前のピッチに立つ11人の姿を目にしたとき、彼らは本当の意味でメッシのいないバルサを、頭脳ではなく肌で感じることになった。入場規制もあり、駆けつけたのは2万人と少し。もやもやとした不満と不安が、空席が目立つ巨大なスタジアムに浮かんでは消えた。