(沖 有人:スタイルアクト代表取締役)
新型コロナの感染拡大が始まって1年半。その間、コロナの専門家は数字を使った科学的な説明を怠ってきたように感じる。
どの対策にどの程度の効果があるのか。何に気をつけなければ、どの程度リスクがあるのか。そして、これまでの対策の成果はどうだったのか──。こういったビジネスの世界では当たり前の検証が疎かにされてきた。だが、論理不明な説明は国民を不安に落とし入れるだけだ。第5波が収束した理由も明らかではなく、コロナ専門家はオオカミ少年化しつつある。
それでは、私たちが知るべき情報は何なのか。以下、統計を専門とする筆者が明らかにしていこう。
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本当に怖いコロナ重症患者の死亡率
コロナの予測モデルを作ってから、毎日のように実績データを更新している。そこで気づいたことがある。重症者数は毎日減っていくが、ほぼ同数の死亡者数が発生しているということだ。
重症者数は累計人数が発表されていないので、重症者数の減少が継続するようになった2021年9月8日から重症者数と死亡者数の2つの数字を比較したところ、重症者数が2009人減少したのに対して、死亡者数は1762人増加していた。重症者数が減る理由は回復するか、死亡するかの二者択一だ。ということは、重症化後、死亡する確率は88%(=1762÷2009)もある計算だ。
ちなみに、厚生労働省が発表している重症化率は1.6%で、死亡率は1.0%である。この2つの数値から計算すると、重症化した62.5%(=1.0%÷1.6%)が亡くなっている。いずれにしても、かなり高い数値だ。10月24日時点で重症者数は202人おり、これに88%をかけると178人、62.5%をかけると126人が亡くなることになる。
ここで最も大事なことは、重症化すると病院では治癒させることができない可能性が非常に高いということだ。通常の病気ならば、入院したらひと安心で、近いうちに退院できると思いがちだ。しかし、新型コロナの重症患者は少なくともそうではない。