ミャンマーでは毎年10月の満月の日に仏教徒のお祭り「ダディンジュ」が行われる。今年は10月20日がその日に当たっていた(写真:AP/アフロ)

 クーデターにより民主政府から実権を奪取し、反対する国民への強権的弾圧を続けるミャンマー軍政と、東南アジア地域の連合体として事態の仲介・調停工作に乗り出している東南アジア諸国連合(ASEAN)との駆け引きが激しくなっている。

 10月15日、ASEAN緊急外相会議は、26日から開催が予定されているASEAN首脳会議への、ミャンマー軍政トップのミン・アウン・フライン国軍総司令官の出席を事実上「排除」することを決定した。これに対して軍政は激しく反発、これまでのASEANによる仲介・調停工作が頓挫する可能性まで出てきた。

首脳会議を「排除」された直後に政治犯釈放の軟化姿勢

 現在のミャンマーを取り巻く国際情勢については、国連や欧州連合(EU)、米政府などによるミャンマーへの経済制裁や非難決議が相次いでいるが、軍政には中国やロシアなどの支援もあり、実質的な影響を与えるまでに至っていないのが実状だ。

 そうした中、ミャンマーなど東南アジア10カ国で構成する連合体であるASEANは積極的にミャンマー問題の解決に向けた道筋を探ろうと模索し続けてきた。4月にはASEAN事務局のあるインドネシアの首都ジャカルタで臨時首脳会議を開催して、ミン・アウン・フライン国軍総司令官を「首脳格」として参加させることに成功したのだった。

 ところが、その臨時首脳会議でミャンマーも含め加盟国全会で一致した「5項目の合意」という問題解決の基本点について、その後、軍政は一向に履行する姿勢を示してこなかった。そのためASEAN側に苛立ちと不信感が生まれ、それが今回の首脳会議への「軍政トップの出席拒否」という厳しい決断に至ったという経緯がある。

 ミン・アウン・フライン国軍総司令官のASEAN首脳会議への参加拒否が決定された3日後の18日、ミャンマー軍政は拘束している政治犯など5600人を釈放すると突然発表し、すでに一部の釈放が始まった。国際社会やASEANによる「人権侵害批判」をかわし、柔軟な姿勢をアピールする狙いだろう。