(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
なんとも拍子抜けした瞬間だった。
10月10日、与党「共に民主党」の大統領選候補者が選出される様子を、私はソウルの自宅の居間でのんびりとテレビで見ていた。結果は、事前の世論調査などで予想された通り、京畿道(キョンギド)知事の李在明(イ・ジェミョン)氏になった。
そして、李氏の演説であの一言を聞いた。「日本を追い抜いて」と。
私は李氏が気になって仕方がない。いや、ある意味で贔屓目に見ていると言った方が適切なのかもしれない。その理由は後で述べるとして、そんな私にとって、李氏の口から飛び出したその言葉はまったく拍子抜けだったのだ。
今頃になっての素朴な発言
韓国ではこれまで何度も、ある不可思議な経験をしてきた。最近ではほとんどなくなったが、少し前まで、韓国人は私にひそひそと秘密の話をするかのように「私は日本が好きなんですよ」と切り出してくるのだ。その理由を問いただすと、「産業も生活水準も、韓国は日本には追い付けないじゃないですか」と言う。