チョンソン貿易社長令嬢の驚くべき過去

「仲立ちがうまければ酒三杯、下手なら頬三殴」ということわざがある。うまくいって当たり前で、下手をすると、一生恨まれるのが仲人という意味だ。

 見合いの歴史は人類の歴史といってもよい。

 血縁の人脈で、結婚ほど重要なものはない。マダンパルとクモの手は誇りをもって結婚を仲介するが、長く事業を営んでいると鉄と木をくっつけなければならないこともある。朝鮮労働党・組職指導部副部長の息子とチョンソン貿易会社社長の娘の見合いがその例だ。

 貿易会社社長の娘には恋人がいた。

 妊娠までしていたが、組織指導部副部長の力を求めたチョンソン貿易会社の社長は、娘の希望を無視して強制的に堕胎させ、組織指導部副部長の息子と結婚させた。

 その時に、決定的な役割を果たしたのがクモの手だった。

 彼は妊娠の事実を隠して結婚を進めた。組織指導部副部長も、金主として有名なチョンソン貿易会社社長の娘を嫁にもらうことをためらわず、クモの手と連携したマダンパルを信用して結婚を快諾した。

 平壌のマダンパルと地方のクモの手によって捏造された見合いだったのだ。

 クモの手はチョンソン貿易会社社長から少なからぬ金を受け取り、マダンパルは組職指導部副部長から重要な人事で特別な計らいをしてもらう助力を得た。

 ところがある日、新婚生活中の夫婦がマンションの20階から一緒に落ちて死ぬ事件が発生した。調査の結果、夫が妻の首を絞めてベランダから落とした後、自分も落ちたことがわかった。捜査機関は夫婦喧嘩を調べる過程で、彼らがマダンパルとクモの手の仲介で結婚した点に注目した。

 マダンパルとクモの手を呼んで尋問し、新婦に恋人がいて堕胎したという供述を得た。親の強要と仲人の紹介で強制的に結婚をした新婦が、夫に事実を知らせて離婚を申し出たのだ。夫は妻を説得したが、腹立ちまぎれに首を絞めてベランダの下に投げ、自殺したという。