クラウドファンディングで火がついたスマホ用天然木スピーカー

 たくさんの商品であふれる今の時代、ユーザーの消費への考え方や消費に求める価値は光の速さで変化している。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大は、消費者の意識や行動だけでなく、売り手の在り方にまで大きな影響を及ぼしている。これまで以上にネットを介した販路が複雑化し、レッドオーシャン化する中で、価値あるものを消費者へ届けるにはどうすればいいのか。

 本稿では実例を交えながら、クラウドファンディングからD2C(direct to consumer)という動きや単なる商品販売にとどまらない価値創出の方法、売り手が今後考えるべきことを解説する。

(山下 貴史:クラウドファンディングコンサルタント)

 筆者はこれまでクラウドファンディングのプロジェクトを数多く実行してきた。自身で手がけたもの以外にも、コンサルティングで携わったものも加えれば軽く3桁を超える。

 クラウドファンディングの初期からその変遷も見てきたが、クラウドファンディングと向き合う姿勢に加えて、クラウドファンディング終了後、どうやってユーザーに商品を認知・購買してもらうかという販路の作り方も転換していく必要があると感じている。

 まず、クラウドファンディングの「プロジェクトをやれば売れる!儲かる!」という時代は終わっている。

 プラットフォームが乱立し、日々たくさんのプロジェクトが公開される中でヒットを生むのは生半可なことではない。日本におけるクラウドファンディングはECのような売るためのプラットフォームという側面が色濃かったが、もうヒットを狙って一山当てられる場所ではなくなっている。

 ユーザーの意識や購買行動が上記のようなマス消費の時代から大きく変化し、クラウドファンディングユーザーとプロジェクトがマッチしなくなっているのも一つの要因だろう。

 日本に入ってきた初期のクラウドファンディングは、アーリーアダプターが最先端のガジェットを購入する尖った消費の場だった。その後、クラウドファンディングというプラットフォーム自体が広く浸透し、毎日無数のプロジェクトが公開されるECのような存在に変化し、現在は広告にかけられるコストがそのまま調達金額に直結するような様相である。

 広告費をかけなければヒットには繋がりにくく、広告主体での消費はまさにマス消費のそれだ。ユーザーニーズとは真逆の立ち位置にあると言える。

 では、もうクラウドファンディングは無用の長物なのだろうか。筆者はそうは思わない。うまく活用すれば、これからのユーザーニーズにマッチするクラウドファンディングは可能だ。