今週(9月12日~18日)は米国の外交政策の崩壊を表面化させた週として、将来の人々に記憶されるかもしれない。
2001年9月11日の同時多発テロは、米国が大日本帝国海軍による真珠湾奇襲攻撃を上回る3700人以上の死者を出したテロリストによる奇襲攻撃であった。その20周年の追悼式典の翌日からの1週間には、世界の覇権を握った米国としては起こり得ないような問題が相次いで表面化した。
まずは何が起こったのかを時系列に列挙してみよう。
(1)9月14日、米軍トップのミリー米軍統合参謀本部長が2020年10月と2021年1月に中国の軍トップに電話し、米国は中国を攻撃するつもりがない旨の話をしていたことが9月21日発行の書籍に掲載されていることがわかった。軍のトップが仮想敵に攻撃しないと連絡していたのだ。
(2)翌15日には、米戦略国際問題研究所(CSIS)がバイデン政権の国家安全保障会議でインド太平洋問題のコーディネーターを務めるカート・キャンベル氏を招き、9月16日に米豪のパートナーシップの今後に関するカンファレンスを開催すると発表した。ところが、わずか1時間の間にキャンセルするという、ワシントンの米シンクタンクとしては前代未聞の事態が起こった。
(3)同じ15日には、米英豪が3カ国による安全保障協力の枠組み(AUKUS)を設置し、その第一弾として米英がオーストラリアに原子力潜水艦の保有を支援すると発表した。実質的なオーストラリアによる米国からの原子力潜水艦の購入である。これにより、オーストラリアは2016年に契約していたフランスからのディーゼル型潜水艦の導入を破棄した。
(4)16日には、米国外交・安保の混乱を見透かしたように、中国がTPP(環太平洋パートナーシップ)への加盟を申請した(これは安全保障にも関連するのだが、メインは経済の話なので、その説明を次回に譲る)。
(5)17日には、フランスが米豪から事前の相談なく潜水艦の売却が破棄されたとして、米豪から大使を召喚すると発表した。16日に実施されたオースチン国防長官、ペイン豪外相、ダッデン豪防衛相との共同記者会見で、米ブリンケン国務長官は「フランスには事前に説明していた」と発表したが、それとは矛盾していた。
(6)17日、米軍は「イスラム国(ISIS)」の関係者を狙ったドローン攻撃が誤射だったと認めた。8月29日、米軍がアフガニスタンの首都・カブールで行ったドローン攻撃では、7人の子供を含む10人のアフガニスタン人が死亡した。
以下、これがどれほどの問題なのか、そしてなぜ米国の外交政策が壊れ始めたのかを見て行こう。