「新・大西洋憲章」は時代錯誤
G7サミット直前の2021年6月10日、米英首脳が、英国コーンウォールのカービス・ベイで、「新・大西洋憲章」(“the New Atlantic Charter”)に合意した。
こういうものがあっても悪くはないかもしれないが、今の時代、全体主義的強権国家である中国・ロシアに対抗するための自由民主主義陣営の理念を、80年前の「大西洋憲章」(“the Atlantic Charter”)の刷新に求めるのは無理がある。
米英2カ国が主導するのというのも、やや時代錯誤ではないだろうか?
いずれにせよ、いまの時代の自由主義陣営全体を象徴する憲章とはなり得ない、あるいはすべきではないのではないだろうか。
第2次世界大戦に至る過程で作成された1941年8月の米国のフランクリン・ルーズベルト大統領と英国のウィンストン・チャーチル首相による大西洋に浮かぶ英戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の艦上で合意された「大西洋憲章」は、「連合国 vs. 枢軸国」の対立の構図から生まれたものである。
名指しこそしていないが、明らかに日独伊3カ国に敵対・対抗して作られたものである。
「大西洋憲章の」の第8条は、自分たちを平和を愛好する国、他方、(日独伊を)好戦国として規定し、こうした好戦国の非武装化が必要であると謳っている。
その後、第2次世界大戦開戦直後の1942年1月1日、米英に加え、ソ連と中華民国の4カ国による「連合国共同宣言」(“Declaration by the United Nations”)として、「大西洋憲章」の8つの条項がワシントンD.C.で合意された。
さらに翌日、22カ国が署名に追加して、これが第2次世界大戦における連合国を構成するの正式な合意文書となった。
すなわち、スターリンが率いる共産主義的全体主義国家のソ連も参加したものであり、本来、連合国を民主主義同盟と称すること自体、大きな欺瞞と言わねばならない。
このような代物を、今後のわれわれ自由民主主義陣営の憲章とすべきではないのではないだろうか。