報じられないこと3:歩行者橋の設計者に拍手!

 最後の3つ目は、褒めたい話である。海岸通りと高速道路を挟んだ西側(汐留側)に架かる歩行者橋の「階段踊り場」である。

 最近の報道で使われている全景の写真は、ほぼここから撮られている。この踊り場は、明らかにカプセルタワーに向けてつくられている。地図を見ると分かるが、拍手を送りたいほどにびっちりと軸線がこのビルに合っているのだ。この向きにしなければならない合理的な理由があるとは思えず、設計者がカプセルタワーを意識したとしか私には思えない。

 うろ覚えだが、この踊り場ができる前は、もっと全景写真が撮りにくかった気がする。そうでなかったとしても、この踊り場が出来たことによって、歩行者の目線がカプセルタワーに向きやすくなったことは明らかだ。コロナ禍の前には、ここから写真を撮る外国人観光客の姿が日常的に見られた。

 この部分の歩行者橋はおそらく、汐留操車場跡地に電通ビルや日本テレビタワー、汐留シティセンターなど主要ビルが竣工した2003年に整備されたものと思われるが、設計者などの詳細は調べてもよく分からなかった。これを設計した人には、心の中でお礼を言いたい。

メディアが報じないこと──おまけ

 最後におまけ。晩年の黒川紀章氏(特に都知事選)の印象で、「奇人」というイメージを持っている人は、以下の記事(BUNGA NETに掲載)を読んでみてほしい。

7人の名言05:黒川紀章「安藤忠雄は時代を見抜いたのではなく、彼の個性がたまたま…」
https://bunganet.tokyo/meigen05/

(イラスト:宮沢洋)

 もちろん奇人というイメージも、ある一面では間違っていないが、メディアは極端な部分だけを取り上げたがるもの。一般メディアの建築報道が増えるのはうれしいことだが、そうした中で建築や建築家の「多様性」を発信することもBUNGA NETの役割だと考えたりするわけである。

◎本稿は、建築ネットマガジン「BUNGA NET」に掲載された記事を転載したものです。