(写真はすべて宮沢洋撮影)

(宮沢 洋:BUNGA NET編集長、編集者、画文家)

 Office Bungaの事務所のある池袋駅周辺の良質な建築や挑戦的な建築を紹介していく。2回目は、初回(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63149)に取り上げた「池袋二又交番」から西に数分、立教大学キャンパス内で最も池袋駅側(東側)に位置する「旧図書館本館・新館」(現名称はメーザーライブラリー記念館)だ。1960年に丹下健三の設計で建てられたものだ。

 立教大学キャンパス内には、文化財級の建物がごろごろあるので、同大学の建物を語る際にこの建物のことが話題になることは少ない。しかし、この建物は、丹下健三の建築の中でもかなり異色であり、池袋に来たら見る価値がある建築だ。

稀有な「脇役の丹下建築」

 何が異色かというと、まずは外壁の一部にレンガを使っていること。この建物のほかにレンガ外壁の丹下建築は思い浮かばない。これは、レンガ外壁の旧図書館本館・旧館(1919年)に対する増築であることから、そういうデザインを採用したと考えられる。2つの建物はつながっていて、図書館時代は一体利用されていた。

 外壁の一部がレンガであることによってコンクリート打ち放し部分が鮮やかに浮き上がって見えるのはさすが丹下健三。何を使ってもうまくまとめる。

 もう1つの異色ポイントは、キャンパス内でこの建築が明らかに“脇役”であること。立地がキャンパスの端っこということもあるが、「どうだオラオラ」的な主張は全くない。建物の一部がキャンパス入り口ゲートを兼ねており、それをくぐって屋外階段を上ると、広場がある。特徴的な反りを持つ屋根も、広場に上がらないとよく見えない。今で言う“負ける建築”か。