アフガニスタン情勢についての会見を終えたジョン・カービー米国防総省報道官とウィリアム・テイラー米陸軍統合幕僚長(2021年8月23日、写真:AP/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 アフガニスタンから米軍が撤収を始めると瞬く間にタリバンの勢力が回復し始め、先月(7月)下旬にタリバン代表団が訪中してから2週間で首都カブールもタリバンが制圧するに至った。急遽アメリカはカブールからの総撤収を開始したが、撤収と言うよりは逃亡に近い無様な醜態を国際社会にさらすことになった。

 アメリカ軍はアフガニスタン政府軍に兵器を提供していたが、結果的に2000両以上の軽装甲車両、7万5989両もの各種輸送車両、4機のC-130軍用輸送機、45機のブラックホーク汎用ヘリコプター、50機のMD530D偵察戦闘ヘリコプター、60万丁以上の自動小銃や機関銃、2015万600発の7.62mm小銃弾、900万発の.50BGM機関銃弾などを含む大量の武器弾薬をタリバン側に掌握されてしまった。この事態は、軍隊による計画的な撤収などと呼べる状況からはほど遠いと言わざるを得ない。

米軍の装備で武装したタリバン戦闘員(写真:筆者が米軍情報筋より入手)

タリバンとの関係を強化していた中国

 中国共産党政府は、バイデン政権による惨めな軍事外交的失策を、「アメリカによる他国に対する“選択的内政関与政策”が失敗すると、いとも簡単にそれらの傀儡政府や軍を見捨ててしまうというアメリカの身勝手な歴史が繰り返された」として、台湾や南シナ海沿岸諸国そして日本などのアメリカに軍事的庇護を期待している諸国に対して警告・恫喝を発している。