プーチン大統領がどんなに強きでも、ロシア経済の相対的地盤沈下は悩ましいところだ(写真はサンクトペテルブルク)

 J.バイデン/V.プーチン両大統領による米露首脳会談がジュネーブで行なわれてから2か月以上が経った。

 その間の出来事や彼等の諸発言を振り返ることで、米露関係とそれに密接に絡む中露関係の今後をどこまで占えるだろうか。それぞれについて概観していきたい。

米露関係

 大きく括れば、首脳会談を契機にロシア側が従来の対米・対中での姿勢を修正するという動きは、ごく僅かな例(シリアへの人道支援に関する安保理決議)*1を除いて見当たらない。

 多くの場合がそうであるように、今回もロシアは受け身の姿勢でいる。

 革命的なことが首脳会談で起こったわけでもないのだから、とりあえずは従前通りの政策としておき、米国側のさらなる出方に注目していく、といった処だろう。

 であれば、今後の米中関係の推移次第で、米国がロシアに対してどのような新たな政策を出して来るのかが焦点になる。

 しかし、米政府内・国内の反露派からの批判を抑え込まねばならないバイデンも対露姿勢の変更(つまりは宥和政策)には制約多々で、結果的にはロシアと同じように従来通りの立場に身を置いているようだ。

 予想された結果とはいえ、米露関係に大きな変化が期待できないとなれば、当面は、実務レベルでの両国間の話し合いが兎も角は動き出したという点だけでも評価しておくべきなのかもしれない。

外交官活動の正常化、地球環境問題、核兵器管理

 事前に多少なりとも前進はするだろうと予測されていた協議事項では、外交官活動の正常化で両国の大使はそれぞれ赴任地へ戻った。

 だが、8月に入り、ロシアがかねて決めていたロシア内米国公館での露国籍者などの雇傭制限が発動され、その報復と思われる査証の期限切れを理由としたロシアの外交官24人の米国からの退去を、米国は要求する状況となっている。

 環境問題では、7月上旬に米国の気候変動担当大統領特使・J.ケリーが訪莫して外相のラブロフとの会談を持った。

 ロシアにも徐々に脱炭素での動きが出始めてはいるが、その急進派とでもいうべきEUとの交渉がこれからであるから、国際合意での具体論はまだ海山付かない状態にある。

「戦略的安定対話」(核兵器管理)については、7月末には外務次官レベルでのこの対話がジュネーブで行なわれた。

 9月に第2回目が行なわれることで合意がなされてはいるものの、中国の扱いについての見通しは全く立っていない。