地下銀行が「繁盛」するのは日本の歪んだ外国人労働者受け入れ制度のせい

 そうやって送金ばかりか、貸付まで手を広げているグェンさんの「地下銀行」。さぞや儲かっているのだろう。

「まったく儲かっていませんよ。本業は別にあるので、“銀行”の仕事は慈善事業のようなものです。お客である元技能実習生の中には、殺人や窃盗を犯す同胞も少なからずいるのは事実。ですが、その責任の一端は、技能実習生制度という名の奴隷制度にもあるのではないでしょうか」

 最後にグェンさんは、自分の仕事も日本の法律に照らし合わせれば違法だと苦笑した。確かに違法だ。だがグェンさんの仕事には、日本の外国人労働者受け入れ政策で生じた現実の歪みを補正するという側面もある。

「外国人技能実習生制度など即刻廃止するべきだ」、「犯罪の温床になる地下銀行は厳しく取り締まるべきだ」。そう感じている人も少なくないだろう。しかし、その種を蒔いたのは日本政府であり、一部の企業だ。外国人技能実習生の置かれた環境をよく把握し、この制度を根本から改めない限り、実習生の“遁走”は減らないだろうし、地下銀行の“活躍の場”もなくならないだろう。