借金返済や送金のための資金は、文字通り彼女が身を粉にして働いたカネであることは容易に想像が付く。しかし、どうやって母国へ送金しているのか。

ベトナムへの送金は「地下銀行」経由で

 実は、前回は紹介出来なかったが、彼女は“逃亡者”でありながら、ある銀行のキャッシュカードを持っていた。

 ご存じの通り、日本人でも以前ほど容易に銀行口座を開設することはできない。それは金融庁がマネーロンダリングやテロ資金供与の防止のため、銀行業界に身分証明書の提出などを求めさせるように指導しているからだ。

 ユキさんに銀行口座を開設した経緯を聞いてみた。

「前ノ会社ニイタ時、社長サンニ銀行ヘ連レテ行カレマシタ。ソコデ書類ヲ沢山書イタラ、数日後ニ社長サンカラ通帳トキャッシュカードヲ渡サレマシタ」

 つまり、彼女の給与振り込みのために作られた口座だったわけだ。実は、金融庁はマネーロンダリングやテロ資金供与の防止を強化する一方で、銀行界へ円滑な外国人技能実習生の銀行口座開設を促している。

 ただ、その元外国人技能実習生たちが作った銀行口座が“オレオレ詐欺”やマネーロンダリングに利用されていると言うのだから、何とも皮肉だ。