(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)
8月15日、アフガニスタンの武装勢力「タリバン」が首都カブールを無血で制圧し、親米政権だったガニ政権は崩壊した。今後はタリバンが政権を運営していくことになる。
しかし、現在のタリバンの実態については、謎が多い。これまで米軍やガニ政権軍と熾烈な戦闘状態にあったため、組織に関する情報は秘匿されており、実態がほとんどメディアに漏れていなかったからだ。最もタリバンを研究していたのはガニ政権および米軍だろうが、少なくとも米軍の情報発信をみても、現在の組織について確たる情報は少ない。
では、タリバンはどれほどの兵力を持ち、どんな指導部で、どのような組織構成になっているのか。
タリバンの兵力は?
まず兵力だが、「米陸軍士官学校の米テロリズム対策センターは、タリバンの主要兵力は6万人だとしている。他の私兵組織や支援者を加えれば、人数は20万人を超えるかもしれない」(英BBC:8月15日)とみられる。
おそらく今回の攻勢以前から戦っていた長年のコアな戦闘員は約6万人、あるいは多くてもそれに数万人加えた程度の兵力で、それに協力関係にある部族民兵などを加えると20万人以上に達するのだろう。
今回、もともと敵対関係にあった各地の有力な部族民兵を調略(寝返らせて仲間に引き入れること)して吸収したり、制圧した町で刑務所から囚人を解放して傘下に取り込んだりしたため、兵力はさらに拡大しているものと思われる。今後、投降したガニ政権軍からも兵力を組み替えるものと推測される。