(加谷 珪一:経済評論家)
新型コロナウイルスの感染が深刻になっていることから、全国知事会が「ロックダウン(都市封鎖)」を含む、厳しい措置の検討を政府に要請する事態となっている。政府は罰則を伴う強制措置は実施できないというスタンスだが、ワクチン接種はこれからという状況であり、それに代わる決定打もないという状況だ。
国家の存在意義すら問われる状況
東京都における新型コロナウイルスの新規感染者数は、2021年7月27日に前週比1461人増の2848人となり、翌28日には3000人、31日には4000人を突破するなど、感染が急拡大している。医療体制は逼迫しており、一部では病院が見つからず搬送に長時間を要するケースも出てきた。
政府はこうした事態を受けて8月2日、コロナ感染者の療養方針の見直しを決定したが、これが大きな波紋を呼んでいる。これまで政府は、重症患者や重症化リスクの高い患者はもちろんのこと、状況によっては軽症でも入院が可能としていたが、今後の入院は重症患者と重症化リスクの高い患者に限定され、それ以外は原則として自宅療養になった(政府はその後批判を受けて、中等症でも入院可能と文書を書き換えている)。
軽症、中等症、重症という用語については、私たち一般人と医療関係者の認識にはかなりの乖離がある。一部の医療専門家は、重症について「事実上の危篤状態」、中等症は「人工呼吸器は必要ないものの、呼吸困難であり、場合によっては人生でこれまで経験したことがない苦しみを味わうレベル」であると表現している。
過度に不安を煽るつもりはないが、今回の決定は「もう助からないかもしれない」という段階、もしくはそうなるリスクが高いという段階にならないと病院には入院できなくなったことを意味している。