日本は厳しい自然に守られながら素晴らしい精神を育んできた。そのことを忘れてはならない(写真は白川郷)

 日本は古い文化を一貫して継承して来た国家であり、古文書に記載されている内容から当時の様子を現代人が理解できる事実は人類史上の奇跡として存在する民族と言える。

 その要因はいくつかある。

 まず、万世一系の天皇家を中核とした平穏な世の中が2000年以上も永続して来たのは、国の統治者が民衆を大切に保護してきたことが挙げられる。

 また、四周が海に囲まれた島国であったため、他民族の侵攻を阻む隔絶された地政学的な幸運にも恵まれていたことも大きい。

 そのおかげで情緒豊かな日本独自の文化が連綿と続いこられた。

民のため心のやすむ時ぞなき身は九重の内にありても
明治天皇陛下御製(明治36年)

 そして、古来多くの国民の識字率が高く、万葉集などに見られるように(現在では当たり前だが)一般庶民や女性までもが歌集に登場し立派な文学作品や絵画を残している。

 しかし、国土が狭小であるうえ、列島中央を脊梁山脈が貫き7割近くが山地で覆われて平地が少ないため、耕作地が限定され、太平洋側と日本海側との人々の交流は困難であった。

 この日本列島は6850の島々から構成され、北にユーラシア大陸、南に太平洋の接際部に位置した温帯であることから大陸と海洋の影響を強く受け、四季折々の変化に富んだ良い面と、それに伴う自然災害に見舞われる厳しい国土であることも特筆すべきであろう。

 島国の中央にある脊梁山脈によって、南から風が吹くと太平洋で大量の湿気を含んだ空気が山肌を駆け上がって断熱膨張し、急激に冷却されて降り注いだ雨が河川を下り太平洋に注ぎ、北風が吹く冬は逆に豪雪や雨となって日本海に戻って行く。

 言わば日本の地形は南北の海洋から汲み上げた大量の水分を高地で回収し、土地を潤す巨大な揚水ポンプとなって国土を緑豊かな土地にしてくれている事で多大な恩恵を受けてきた。