第4因子は「ありのままに!」因子(独立とあなたらしさの因子)。
この因子は、他人と比較せずに自分らしく生きていける人は、そうでない人よりも幸福で、自分らしさをはっきり持っている人が幸せであるということを示しています。また幸せには、長続きしない幸せと長続きする幸せがあります。長続きしない幸せは金、モノ、地位など「地位財」といわれる他人と比べられる財で、一定以上の経済的な豊かさやモノの豊かさ、地位や名誉は、必ずしも幸せをもたらさないとしています。 一方、長続きする幸せは、環境に恵まれている幸せ、健康である幸せなどのほかに、「心の要因による幸せ」が含まれる「非地位財」による幸せであるとしています。
前野氏は 著書の中でこの4つの因子を満たすように日々の行動を心がけて生活していれば、誰でも幸せになれる可能性があるという説を展開しています。
多くのウェルビーイングの研究者たちが共通して語っているのは、幸せになることを目的にすべきではなく、幸せは日々の生活の結果として感じられるものである、ということです。例えば哲学者でもあるラルフ・エマーソンは、著書『Self-Reliance』でこう述べています。
〈人生の目的は幸福ではない。
本当の目的は、この自分が人の役に立つこと、活かされることである。
人の心、敬愛に値するようになること。
人、すべての物事に、思いやりの心、慈しみ、共感の心をもてること。
生きたという実感、しっかり生きることができたという実感をもてることである。〉
アップル、グーグルが導入したマインドフルネス瞑想
ポジティブ心理学とともにウェルビーイングと関係深いのがマインドフルネスです。
マインドフルネスとは、「『今、この瞬間』を大切にする生き方」を指す瞑想とヨガを基本とした治療法です。マインドフルネスの実践により、ストレス軽減や集中力の強化などの効果が得られるとされることから、今大きな注目を集めています。
マインドフルネスが世界中に普及するきっかけとなったのは、マサチューセッツ大学医学校名誉教授のジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)博士が仏教の瞑想法をベースとして、「マインドフルネスストレス低減法」というプログラムを開発したことでした。日本の禅に影響を受け、仏教を宗教としてではなく人間の悩みを解決するための精神科学としてとらえ、誰でも抵抗なく実践できることで一気に広がりました。