コロナ禍で顕在化した社員の幸福度と経営課題の関係

多様な視点と広い視野で「不確実な未来」に対処せよ

JBpress/2020.11.26

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慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授 ウェルビーイングリサーチセンター長 前野隆司氏慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授 ウェルビーイングリサーチセンター長 前野隆司氏

 2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され、残業時間の削減やフレックス制度の導入など、これまで多くの企業が改革に取り組んでいる。さらに、突然のコロナ禍によって従来型の働き方が見直され、かつてないほど社員の創造性や生産性が重要になっている。

 先行き不透明な状況でも社員の力を引き出して業績向上へと結びつけるために、経営者はどうすればよいのか。幸福学研究の第一人者である慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授に話を聞いた。

「幸せ」を抜きに改革は実現できない

―― 働き方改革の名のもと、多くの企業が様々な取り組みを進めています。しかし、なかなかうまくいっていないという声も耳にしますが、何が問題なのでしょうか。

前野 隆司 氏(以下、前野氏) 結論から言うと、「幸せ」を考慮すれば本当の働き方改革が実現できるのに、それが抜けていることが問題です。そのために、働き方改革を嫌々やっていてうまくいかない、あるいは社員が疲弊してしまうというケースが多いのです。

 改革と呼ぶからには、全体的に大きくデザインを変える必要があります。しかし、「時短」「フレックス」「テレワーク」といった言葉だけに注目してしまい、目先の改善や変化にとどまっている企業が多いように見えます。

 もちろん、難しい面があることは事実です。幸せとは、社員みんながやりがいを感じて繋がることを意味します。しかし、大企業のように何千人、何万人の従業員がいると、社長以下全員が一丸になることは、中小企業に比べて容易ではないでしょう。

 現在、働き方改革がうまくいっている企業の多くは、働き方改革が叫ばれる前から改革に取り組んできたところです。社員の多様なニーズに合わせた制度を作って改革を続けてきた結果として、売り上げを増やし、離職率を下げてきました。

 具体的にどのような制度かというと、社員一人ひとりの要望に応えるきめ細やかな制度です。例えば、産休を取りたいと言われたら、産休を3年間取得できる制度をつくったり、友人の会社を手伝いたいので辞めたいけど再び戻ってきたいと言われたら、一度辞めても戻ることのできる制度を整備したり、という具合です。

 個々人でやりたいことは違うので、それらに細かく配慮することが一番の成功要因です。大企業の場合、ついつい大きな制度を作ろうという発想になりがちですが、制度を一つ作るだけではすべての社員に響きません。それよりも手間はかかりますが、きめ細かく一人ひとりのニーズに対応することが、一見遠回りのようで実は改革への近道だと思います。