新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本でもテレワークが急激に普及することになった。多くの就労者が在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務を命じられ、日本人の働き方が大きく変わりはじめている。
東京都産業労働局によると、従業員30人以上の都内企業におけるテレワークの導入率は、2021年5月時点で64.8%となっている。緊急事態宣言期間中か否かによって多少の変動はあるものの、2020年4月頃から急激にテレワークの導入が進んだことが伺える(下の図)。
コロナ以前のテレワークの位置づけ
日本企業のテレワーク導入は感染症対策の一環として広がりを見せているが、もともとは社員の働き方改革の一環として推進されてきたという経緯がある。
日本におけるテレワークのはじまりは、NECが1984年から1990 年にかけて、社員の通勤負担軽減のために東京・吉祥寺にサテライトオフィスを設置した頃からと言われている。
NECは東京都港区に本社を構えていたため、結婚や出産を機に女性社員が離職してしまうことが課題となっていた。そこでNECは社員1人に1台のPCを支給し、特定の社員にサテライトオフィスでの勤務を命じたのだ。
その後、1991年には日本サテライトオフィス協会(現日本テレワーク協会)が設立され、国家公務員へのテレワーク勤務実験も開始されるようになる。
2014年に公表された国のIT総合戦略「世界最先端IT国家創造宣言」には労働者の働き方の多様化に対応し、ワークライフバランスを実現するためにテレワークの必要性が掲げられた。
また、テレワークは東京オリンピック・パラリンピックにおける通勤問題への対策としても導入が推進されてきた。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会によると、オリンピックの観客数は780万人程度、パラリンピックの観客数は230万人程度と予想されており、大会期間中の交通機関が麻痺することが懸念されていた。
そのため、東京都などはテレワーク国民運動プロジェクト「テレワーク・デイズ」を実施し、企業を対象にしたテレワーク一斉実施の効果測定を行ってきた。
コロナの拡大以前のテレワークは、このように社員のワークライフバランスや交通問題対策などで推進されてきたという歴史がある。