東京オリンピック・パラリンピック開催予定なのに新型コロナウイルス感染症に対して場当たり的対策しか打てない日本の政権中枢には大きな問題がある(写真:川嶋諭)

 新型コロナウイルス感染症対策には、感染を止め国民の命を守るための強制力と、それを実行できるシステムが必要だと前回述べた。

(「新型コロナ対策:日本が欧州の足元にも及ばないわけ」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65343

 もう一つの問題は、「なぜ、政府は素早い決定ができないのか」である。

 決定が遅れれば遅れるほど感染者と死者が増え、経済も回らない。重大局面での政策決定などに疑問・不満を持つ人も多いことだろう。

 ここには、日本の国家機構の情勢判断、政策決定プロセスに問題があると感じている。

 そこで、政策決定の具体的問題を列挙し、問題の深層にあるもの、問題への対策について考察する。

1.提言がない野党の政府批判

 野党は、「地方自治体の首長の判断が間違えている」とか、「総理の判断」が誤っていると発言する。何かにつけて批判するだけだ。

 その他、「判断と処置が遅い」、「国会議員は、コロナ対策で政策的な提言をしていない」、「お願いを聞かない国民を規制するために法律を整備せよ」、「重症患者用のベッドが足りない、第2波の時から準備しておくべきだった」などもある。

 最大野党であっても、検討に値する政策提言が出てこない。せいぜい発言したとしても、「自粛と一体で補償」と国民受けを狙うことだけで、将来的に見れば、補償のお金を税金で負担しなければならないことは言わない。

 コロナ感染で、1万2000人近い日本人が死亡している。自分の身近な人が死亡している人々のことを深刻に考えて、政府の考えが及ばない部分での対応策を提案してほしい。

 コロナによる国難の今であっても、野党の批判は現政権を倒すための政戦略であり、国民の命を真剣に救おうと考えているとは思えない。

 日本には国家政策決定に資するためのシンクタンクがない。

 各省庁には専門の研究所がある。ほかに、民間の総合研究所、研究財団があるが、国家の総合政策や国家戦略を決定するためのシンクタンク(頭脳集団)はないといってよい。

 野党においても政策を案出するためのシンクタンクはない。

 だから、政策案が出てこないのではないか。国家戦略を考えるのは、国の政治家だと思うのだが、与党と野党が国家戦略案を提示しての議論がなされたという記憶はない。

 議員50~100人を要する政党には、政策研究と提言のためのシンクタンクを設立すべきだと考える。

 野党は、現政権を倒すために批判するばかりでなく、国策を提案できる野党であってほしいものだ。