ワクチンの大規模かつ迅速な接種が望まれる中、打ち手不足の問題が浮上している。日本で職種の枠を取り払う動きが鈍い理由とは何か? 讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が掘り下げる。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第51回。
5月16日から、新たに北海道、岡山県、広島県にも緊急事態宣言が発出され、まん延防止等重点措置実施区域に群馬県、石川県、熊本県が加わりました。全国的に変異ウイルスが広がったこの厳しい状況で、ますます期待されているのがワクチンです。
ワクチンについて本連載では、アメリカで治験に携わっている紙谷聡先生(第36回、第37回)と抗体解析に携わる小出昌平ニューヨーク大学教授(第38回)に、おもにmRNAワクチンの原理、有効性、安全性、なぜ驚異的なスピードで開発しえたのかなどを伺いました。ひとことでまとめれば、mRNAワクチンは長年の科学的知見の積み重ねによって得られた画期的な予防薬だといえます。
実際、人口(約900万人)の6割近くが2回の接種を完了したイスラエルでは、1日あたりの新規感染者数が38人、死亡者数が1人とほぼ収束しています(5月13日時点の7日間移動平均。1月のピーク時には、それぞれ8624人、65人)。