日米共同声明を発表する菅総理とバイデン大統領(2021年4月16日、写真:AP/アフロ)

(武居 智久:日本戦略研究フォーラム顧問、元海上幕僚長)

 新型コロナウイルスが一向に収まらぬ中で行われた今回の日米首脳会談は、菅総理がバイデン大統領の就任後初めて3次元の世界で面談した外国首脳だったことに加え、日米安保条約の精神に立ち返って同盟を立て直し、強靱化していく道筋を示した意味において多くの新鮮な内容を含む会談になった。

 発表された日米首脳会談共同声明は、前文とあとがきを除けば、外交と防衛に関する方針を示した「自由で開かれたインド太平洋を形作る日米同盟」と経済、環境、衛生政策のビジョンを示した「新たな時代における同盟」の2つのパートからできている。英語版の声明では前者は単語数で全体の約37%、後者は約39%とほぼ同じ分量で語られている。

不測の事態が起きることを覚悟すべき

「自由で開かれたインド太平洋を形作る日米同盟」のパートは、首脳会談に先立って3月16日に行われた日米安全保障協議委員会(2+2)の共同発表の内容を確認し裏書きした部分である。2つの文書に齟齬はなく、共同声明は分量が多い分だけより具体的に記述している。日米同盟が普遍的価値及び共通原則(universal values and common principles)に対するコミットメントに基づく自由で開かれたインド太平洋のための共有されたビジョンを推進する上で、中国と北朝鮮への懸念が国名を挙げて具体的に言及されている点も同じである。