相手への興味が関係の第一歩

 幸せになる力。それは、相手に驚き、相手に興味を持つことではないだろうか。自分の能力を誇るのではなく、相手のパフォーマンスや親切さに驚き、関心を示す。これこそが、幸せになる力なのかもしれない。

 こちらが相手に驚き、興味津々といった姿勢を示すと、相手も自分に興味を示し、関係を築こうとしてくれる。これを積み重ねていくうちに、仕事の話まで舞い込んできたりする。関係性が、すべてをよい方向に転がしてくれるようになる。

 互いに驚き合い、関心を持ち合う。そして補い合う。こうして協働で課題を解決していった方が、能力が高い人の独力よりも、総じて高いパフォーマンスを発揮する。しかも長続きする。みなさんも思い当たるところがあるのではないか。

能力は誰かを助けるためにある

 地獄では、長過ぎる箸でご馳走を自分の口に運べずに飢えて苦しんでいるけれど、極楽では、同じ長さの箸を使って別の人の口に運び、自分は他の人に食べさせてもらうというように、互いに助け合って食べる、という話がある。能力というのは、誰かを助けるためにあるものだ。

 その能力も、「能力主義」の考え方だと、誰かを押しのけて自分が優位になるために、という本末転倒な使われ方になる。能力は誰かを見下すための道具になり下がり、自分に落伍者の烙印を押した人は気力を失ってしまう。それでは何のための能力だか分からなくなる。誰かを幸せにする能力ではなく、誰かを不幸にする能力に堕してしまう。

 能力は高いに越したことはない。高ければ高いほど、誰かを助ける力になるからだ。しかし、能力主義に変質すると誰かを不幸にしてしまう。この矛盾を、どう解消したらよいのだろう?