こちらはとても貫禄のある猫。思慮深い顔をしていました。
ローマの中心地を散策していると、「ローマは一日にして成らず」という言葉が何度も脳裏に浮かびます。長い年月が染み込んだ風合いの大理石を見て「なるほどねぇ」と、何度も感心しました。積み重なった歴史が、街角から香ってくるようです。
車の上で日向ぼっこ。気持ちよさそうです。
頭をゴツゴツと、わたしの足に打ちつけてきたので、よしよしと猫を撫でていました。すると、そこを通りかかった女性が、「なに、この猫。可愛い! ボブテイル(短いシッポ)じゃない!? わたしは、よくこの道を通るけど、こんな可愛い猫を見たのは初めてだわ」と、興奮して話しかけてきました。
ところがそうしているうちに、肝心のボブテイルくんはいなくなっていました。
スペイン広場からポポロ広場に向かう通りで、おしゃれな画廊を見つけました。重厚な建物に引き寄せられるように近づくと、アトリエが併設されていて、画家の男性が出迎えてくれました。
まず挨拶をして、先に絵の話を少ししたあと、ちょっと控えめに「車の上にいる猫は、あなたの猫ですか」と聞いてみます。「ちがうよ。あれは隣の家の猫だよ。うちの猫を呼ぼうか」。男性が「マティース!」と叫ぶと、黒猫が飛んできました。