2035年には年金積立金が底をつくとの報告も

 高齢者を支える年金制度も危機的状況にある。2019年4月に社会科学院が公表した報告書によれば、サラリーマンら3億4000万人が加入する全国都市企業従業員基本年金の積立金は、このままだと2035年には底をつくというのだ。

 もともと中国では儒教思想が根強く、「家」制度の下で高齢者は家父長として敬われ、同居家族が介護を担うものとされてきた。1996年に「高齢者権益保護法」が制定されたことで、法的にも高齢者を養うことが家族の義務になった。

 だが近年、経済発展により晩婚化が進み、都市部では独身生活を謳歌する若年層が消費に走って預貯金などなく、とても親の面倒を見るどころではない。郷里では「空の巣老人」(子供が巣立った後の高齢者)の割合が急増した。2016年の調査では、独居老人と高齢夫婦だけの世帯が高齢者の5割以上を占め、とくに農村部では孤独死や自殺が増えて、深刻な社会問題になっている。

 中国政府は日本を真似て国民介護保険制度を取り入れようと、2016年3月、第13次5カ年計画(2016~20年)で「長期介護保険制度の構築を検討する」と明言したが、まだ着手したばかりだ。

 こうした背景の下、中国では日本式介護ビジネスや老人ホームの建設が注目されるようになった。日本政府が日本の医療・介護技術を輸出する「アジア健康構想」を立ち上げ、2017年から「介護ビジネスの国際展開」を積極的に推進したことが、後押しした。