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写真:AP/アフロ

(文:アヤコ・ジェイコブソン)

アメリカでは、昨年末からのべ1億人以上が新型コロナワクチンの接種を受けた。しかし、その現場では我先にと抜け駆けを試みる「ライン・ジャンパー」たちによって多くの問題も起きている。

 アメリカの新型コロナワクチン接種事情を、このエピソードからお伝えしたい。年会費199ドルで会員制ヘルスケア・サービスを提供する「ワン・メディカル」(正式社名:1Life Healthcare/サンフランシスコ)の「抜け駆け」だ。

「ワン・メディカル」は、昨年1月にナスダック上場を果たした企業。スマホのアプリから全米9州とワシントンD.C.にあるクリニックの診療予約ができるほか、24時間のオンライン診療や処方まで受けられる利便性が好評を博している。

 しかし、州のワクチン接種資格を持たない同社幹部の親族や友人、健康な会員、会費を支払っていないトライアル会員の若者に接種していたことが発覚。この事態を受け、同州サンフランシスコ、サンノゼ各行政の保健局は「ワン・メディカル」へのワクチンの供給を停止、下院小委員会も調査に乗り出した。

 このようなトラブルは各地で相次いでいる。

 ワクチン接種の条件を「65歳以上の住民」としているフロリダ州では、老女に化けた女性2人が1度目の接種に成功。2度目を試みようとして見つかり、会場を追い出される騒ぎが起きた。

 テネシー州では、昨年の大晦日、保健局員が数時間並んでいた高齢者を「ワクチンはもう無い」と言って追い返した後、自分たちの縁者や知人を呼び寄せて接種していたことが判明している。

 北カリフォルニアのグッド・サマリタン病院では、最高経営責任者(CEO)が富裕層の暮らす学区の教師たちに便宜を図り、医療従事者に見せかけてワクチン接種を行ったとして、辞任に追い込まれた。

 このほか、ウィスコンシン州ミルウォーキー郊外の病院では、「ワクチンは有害」との陰謀論を信じた薬剤師が約570人分のワクチンを冷蔵庫から取り出して一晩放置し、逮捕される事件も起きている。

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