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(髙山 亜紀:映画ライター)

「すべてのおばあちゃんに捧ぐ」と記されたエンドロールに思わず、うなった。特別なのに普遍的。そんな家族の映画が『ミナリ』である。

 80年代に渡米した韓国移民家族の奮闘記『ミナリ』。先日、行われた第78回ゴールデングローブ賞授賞式では昨年の『パラサイト 半地下の家族』に続いて、外国語映画賞を受賞。オスカー最有力の呼び声が高まっている。

監督の自伝的要素も盛り込まれた作品

 韓国系移民のジェイコブはアーカンソー州の広大な土地を手に入れる。誰も買わない荒れた大地とそこにポツンとあるトレーラーハウス。妻のモニカは独断で決めた夫に怒り心頭。二人の娘アンと病弱な弟のデビッドはけんかが絶えない両親が心配でたまらない。結局、モニカが韓国に一人、残してきた母を呼びよせることで、一件落着。希望に満ちた家族5人での生活が始まった・・・。

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 この作品で注目したいのはモニカの母、つまりアンとデビッドにとっての「おばあちゃん」である。彼女がとにかく強烈だ。いくらかわいい孫のためとはいえ、故郷を離れ、言葉もわからないアメリカに渡ってくるくらいだから、相当、肝が据わった人なのだろう。監督と脚本を手掛けたリー・アイザック・チョンは移民2世で、この作品は自伝的要素が強い。本作に出てくるデビッドは監督の分身で、おばあちゃんはまさしく監督のおばあちゃんだろう。