大きな失敗を避けて長く運用するか、40代のうちにリスクを取るか
あらためて、今回の相談者について詳しく見ていきましょう。
工具関連製品を製造する工場に勤めている男性のサラリーマンで、年齢は41歳。配偶者有り、子ども1人(小学2年生)、年収約450万円の方になります。現在の預金は約200万円。数年前に自宅を新築して、住宅ローンの残高が2000万円ということでした。
お子様が小学校低学年で、教育資金が必要なことを考えると、お子様が独立する前にお金が不足してしまう事態があるのではないか心配です。したがって全額をiDeCoに回すのではなく、一部を換金しやすい形で運用することも必要だと思います。
私でしたら、毎月iDeCoに1.5万円と、いつでも換金できる投資信託をNISAかつみたてNISAで1万円、普通積立預金5,000円の、合計3万円でスタートします。前回と同じく「永久に積立を続けるiDeCo、何かあったら途中下車もできるNISA、そして簡単に下車できる普通積立」というイメージで、今後も最低でも毎月3万円を積み立てることにします。
ただ、ローンの支払いもしながら毎月3万円を資産運用に回すと、相談者のおこづかいが減らされてしまうのでは? 私としては心配になってしまいますが……。
次にiDeCoのポートフォリオです。
①割り切りポートフォリオ(運用期待値=年2%)
元本確保型商品40%、国内株式商品15%、外国株式商品10%、バランス型商品(債券多く含む)35%
②チャレンジポートフォリオ(運用期待値=年4%)
元本確保型商品20%、国内株式商品40%、外国株式商品20%、バランス型商品(債券多く含む)20%
①割り切りポートフォリオは、元本確保型を多くしてリスクを減らし、中長期的に一定の利回りを目指す運用になります。大きい失敗を避けるためのポートフォリオとも言えます。
このポートフォリオで毎月1.5万円を20年間積み立てれば、元本の360万円が、20年後には442万円になるという計算です。最悪、市場環境が悪くなって運用期待値=0%になった場合でも、結果として20年間で約360万円を積立できます。もちろん、運用で増えなくてもiDeCoによる節税効果があるので、運用が0%でも資産全体ではプラスの収益になります。
iDeCoのお金を65歳以降の年金、死亡保険、相続の代わりとみなせば、一生涯の死亡保険の減額など保険料の見直しにもつながるでしょう。
そして、40代はこれから教育にお金がかかり始める年代になりますので、NISAなども活用しながらお金を運用し、できれば少しずつでも教育資金の原資を増やしていきたいものです。
次に、②チャレンジポートフォリオです。毎月1.5万円を年4%で運用できれば、20年後には548万円になります。こちらはリスクの大きい株式の比率が高めなので、本来は長期的な目線での運用法になります。マーケット状況によってはポートフォリオのメンテナンスが絶対必要になってきますので、ご承知ください。
②は、先々までリスクを負いたくない方に選んでいただきたいポートフォリオとも言えます。既婚でお子様がいるケースでは、さまざまなお金の入用を想定して、総合的に考えなければなりません。まだ若い40代から50代の頭までにリスクを取ってお金を増やして、60歳を迎える前に普通積立預金中心の運用に切り替えるという方法もありうると思います。
この先20年、資産運用をしながらローンを支払い続ければ、つらい時もあるかもしれません。ただ、決して悲観することはありません。お子様がいることによって、お子様からは「夢」や「希望」を与えてもらえます。そして持ち家があることによって、「自由なる居場所」を確保できます。
奥様の協力を得ながら、借入金の返済や教育資金の準備、そしてiDeCoと向き合っていただきたいものです。
次回は、50代の方のポートフォリオを考えていきます。