株式アナリスト鈴木一之のイチオシ!

 日本では、蛇口をひねればすぐに安全な水が流れ出てきます。「これは現代の世界では非常に特殊な環境であることを忘れてはなりません」と株式アナリストの鈴木一之さんは指摘します。今回のテーマは「水」。近年、より身近なリスクとして指摘される「水危機」とその解決に貢献する企業群について解説していただきました。

より身近なリスクとして「水危機」が指摘される

 鈴木一之です。今回は水に関する話題です。

 水は生命の源です。人体の7割近くは水でできています。人は水なしでは生きていけません。SDGsの言葉を耳にしない日はありませんが、SDGs(持続可能な開発目標)を構成する17種類の目標のうち6番目は「世界中で安全な水とトイレを」が掲げられています。

 気候変動や異常気象は人類にとってもはや所与のもの、当然のものと認識されつつあります。より身近なリスクとして「水危機」が指摘されるようになりました。

 国連は2014年の「世界水発展報告書」において、すでに世界中で7億6800万人の人たちが安全な水資源にアクセスできない状態にあると報告しています。

 水に関する権利が満たされない人は35億人に及び、世界の人口の3分の1に当たる22億人の人たちは安全な飲み水を手に入れることができません。

 日本では水道の蛇口をひねるとすぐに飲めるほどの安全な水が流れ出てきます。あまりに日常的すぎて、安全で清潔な環境が簡単に手に入ると錯覚してしまいます。しかしこれは現代の世界では非常に特殊な環境であることを忘れてはなりません。

 世界の25億人の人は清潔なトイレが使用できず、10億人は屋外で排便しており、18億人がし尿や便で汚染された水源から飲み水を得ています。

 手を洗う際にも何億人もの人が水や石鹸を使えず、これは子どもたちの健康に大きな影響を与えています。世界の人口の3人に1人が清潔なトイレを利用できない結果、毎年350万人が下痢や感染症で命を落としています。

 飲み水が安全でないという理由によって、21世紀を迎えた今も1000人中100人以上の子どもは1歳まで生存できません。日本でも水道の普及率が20%ほどでしかなかった大正10年(1921年)までは、子どもの死亡率は2%、1000人中190人が1歳になる前に死亡していました。

 それが水道普及率が98%に高まった2014年には、日本の乳児死亡率は1000人中2人までに下がりました。水道普及率が向上するにしたがって、子どもの死亡率は大きく低下するのです。

アフリカと飲み水アフリカではきれいな飲み水の確保が難しい地域も多い

世界の水の使用量は2025年には5139億トンへ

 世界の水の使用量は、1950年から1995年の間に3倍に増加しました。これが2025年には、1995年比でさらに1.4倍になると予想されています。水の需要が増える理由は、人口の増加、新興国の経済発展、地球温暖化など様々な要因があります。

 世界の人口は2011年に70億人を超えました。これが2050年には95億人に達すると予想されています。増加する25億人の人たちがどれほどの食事や入浴を行うか。それだけで水不足が今まで以上に強まる地域が拡がると考えられます。

 さらに水不足は、主にアジアおよびアフリカの経済発展によってもたらされます。1950年の世界の水の使用量は1369億トンでした。そのうちアジアが860億トン、北米が289億トンでした。

 1995年には、世界全体で水の消費量は3752億トンに拡大し、うちアジアが2157億トン、北米が672億トンに増えました。それが2025年には、世界全体で水の消費量は5139億トンに増えると予想され、アジアが3104億トン、北米が788億トンまで増加すると見られます。