医療従事者はどれだけワクチンを打ってくれるか?
翻って日本を見ると、日本で最初に課題になるのは医療従事者からのワクチン受け入れだ。米国では医療従事者の接種意向についても報告されており、ここでも決して楽観視はできない。
査読前論文だが、米国の研究グループが昨年10月~11月にかけて、医療従事者を対象として調査したところ、36%がワクチン接種に前向きだったが、56%が「不明」または「様子見」と回答していた。
さらに、別の米国シカゴの研究グループは、コロナ対応の最前線にある救急部門の医療従事者の調査でも8%が接種しないと回答している状況を問題視している。92%は接種予定と回答していたが、それでも「注意を要する」と指摘した。ワクチン関連のデータ不足などが影響していると推定していた。
日本においては、医師向けに調査をした医療サイトのm3.comが1月にウェブで簡易調査をしているが、医師の中で接種を受ける意向を示しているのは49.5%。一方で、接種を受けない意向を示しているのも20.0%いた(回答者424人)。これは医師のデータであり、看護師など他の医療従事者はまた別だ。なお、日本において医師は約30万人であるのに対して、看護師は約130万人いる。
2月以降、まずは医療従事者のワクチン接種をいかに進めるかが最初の関門になる。その上で高齢者をはじめ予定されている一般向けのワクチン接種をどう進めるか。ここでも接種意向を注視しながら進める必要があるだろう。
ちなみに、川崎医科大学などの研究グループがこの1月に、9月に行ったウェブ調査の結果を論文報告している。これによると、65.7%がワクチン接種をすると前向きに回答した。22.0%が分からない。12.3%が接種しないという結果だ。これを見ると、問題はなさそうだ。
ところが、状況は流動的なのか、世論を見ているとそう単純ではないかもしれない。
日本のヤフーのウェブサイト上では、簡易アンケート集計を継続して行っており、1~2月の期間に、34万人強が回答している(2月14日時点で実施中)。これを見ると、「当面接種を受ける気がない」が39.7%と全体の4割に上っている。さらに、「様子を見てから接種を受けたい」は29.0%、「すぐに接種を受けたい」は28.8%だ。
この調査には、そもそもワクチン接種対象ではない16歳未満も参加できるようだ。当面、ワクチン接種は16歳以上が対象のため、短期的にはアンケートの意味はないかもしれない、ただ、これとは別に、朝日新聞が1月に実施した有権者を対象にした調査では、ワクチン接種に対して「様子見」と回答した人が7割。すぐに受けたいは21%と大きな差がある。「様子見」という選択肢が一番選びやすい選択肢ではあり、ウェブでのアンケートの信頼性の問題もあるだろうが、皆が積極的という状況にはないだろう。
この1月に「6割超はワクチン接種を受けるつもりがない」という女子高校生を対象にした100人アンケートに基づく記事がSNSを通して拡散した。この記事はワクチンの有効性に触れておらず、不安をあおると不評を買った。
この時は記事が削除されたが、ここまで述べたように国内外の情報を見ていくと、6割超とは言わないまでも、デンマークや米国シカゴの研究グループが指摘したように背景も踏まえ、消極層や接種意向には注意を払い、事実をとらえて念入りな対応を考える方が重要だ。
例えば、重い副反応の頻度の低さが強調されることもあるが、ワクチン忌避の理由が科学的プロセスへの不信感であれば、出すべき情報は別になるだろう。