前の大統領もその前の大統領の「塀の中」にいる韓国では、最大最強財閥のトップが再収監されても「異常」ではないのかもしれない。
それでも李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)サムスン電子副会長への実刑判決は衝撃だった。
裁判の過程もまた、極めて異例だった。
2021年1月18日、ソウル高裁の破棄差し戻し審で、李在鎔氏に対して懲役2年6か月の実刑判決が下った。李在鎔氏は即時拘束となり、3年ぶりに再収監の身になった。
再上告せずに刑が確定
2021年1月25日、李在鎔氏とこの事件を捜査、起訴した特別検事は、破棄差し戻し審の判決を受け入れて再上告しないことを決めた。これにより、李在鎔氏に対する判決が確定した。
李在鎔氏はもちろん、判決内容に「納得」したわけではない。再上告してもこれを大法院が受け入れる可能性は「ほとんどない」(法曹界関係者)ことなどを考慮して断念したとみられる。
判決内容に対して、韓国メディアの報道は見事なほどに2つに割れている。
保守系のメディアや経済紙は、「企業は戦争中なのに…総帥不在サムスン 視界ゼロ」(毎日経済新聞)のように、判決を批判的に報じている。
財閥総帥の犯罪があるたびに、「悪いことをしたのなら償うのは当然だが、財閥総帥は経済活動で国に奉仕するのも償いの一つだ」という考えが根底にある。
今回も「経済がこんなに大変な時に、収監して経営に打撃を与えるのは国家にとって大きなマイナスだ」という主張だ。
これに対して、進歩系のハンギョレ新聞の1面トップの見出しは「李在鎔拘束…サムスン政経癒着の悪弊断罪」だった。