ただしこの報告書が公表されたのは1月4日、つまりトランプ支持者の一部が米国議会に乱入して、トランプ大統領への非難が全米に広がった直前である。とはいえ、バイデン氏への評価はトランプ氏評価と必ずしもゼロサムではない。トランプ支持が減れば、その分、バイデン支持が増す、というわけではないのだ。ましてバイデン氏の大統領としての地位がトランプ氏の命運と反比例の関係になっていることはない。

 この報告書を読むと、トランプ氏の振る舞いとは関係なく、バイデン氏自身が抱えた問題や現在の米国の特殊な状況が米国と世界の今後に多大なリスクの要素を注入しているという構図が説明されていた。

 その一例として同報告書は、「バイデン次期大統領は米国民からの信託という点では1976年に当選したジミー・カーター大統領以来、最も弱いといえよう」と述べ、米国内の極端な政治分裂の状況に加えて、バイデン氏は高齢のため2期目はないとの予測をマイナス要因として強調していた。

 確かにカーター大統領は近年の米国の歴代大統領のなかでも失政を重ね政権として弱体だったことで知られる。

 私自身がワシントンに特派員として初めて赴任した時期が、まさにカーター政権の発足時であり、それ以後の4年間、カーター政権の失態を目の当たりにすることになった。ジミー・カーターという人物は、人間的には大いに好感の持てる誠実な人柄だったが、国内、国外の政策は歴史に残る失敗の連続だった。

 カーター政権下の米国経済は沈滞をきわめ、「マレーズ」(不定愁訴)と称される暗い雰囲気が米国社会をおおった。対外関係ではソ連のアフガニスタン大侵攻を許し、イランの過激派に米国人外交官約50人を1年近くも人質に取られた。

 そんなカーター大統領を引き合いに出されるほどバイデン政権が弱体化するという予測を、まさかブレマー氏から受けるとは、私には驚きでもあった。