SM-3ミサイルを発射した米海軍のミサイル駆逐艦「フィッツジェラルド」(資料写真、出所:米海軍)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家)

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 11月16日、アメリカミサイル防衛局は、艦上から発射した弾道弾迎撃ミサイル「SM-3ブロックⅡA」(以下「SM-3」)で大陸間弾道ミサイル(以下「ICBM」)を迎撃する実験に成功しました。SM-3はイージス(艦載防空システム)用の艦船発射型ミサイルで、海上自衛隊にも配備されています。

 一方、日本では12月18日に、イージス・アショア配備停止に代わる代替策として、「イージス・システム搭載艦」を建造する方針が閣議決定されました。

 これらの2つは、共に弾道ミサイル防衛に関するニュースですが、関連する動きとして捉えられてはいません。しかし、そう遠くない将来に、日米のミサイル防衛のあり方に大きな影響を与えたニュースとして同時に思い起こされるかもしれません。

 もしかしたら、アメリカを目標として北朝鮮から発射されたICBMや、南シナ海や渤海から発射される中国のICBM級SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を、日本のイージス・システム搭載艦が迎撃することになるかもしれないからです。

 以下では、SM-3によるICBM迎撃実験の概要を紹介しつつ、今後どのような実験が行われるかを推察することで、日米のミサイル防衛の今後の可能性を考えてみたいと思います。

ICBM迎撃実験の概要

 アメリカのミサイル防衛局が実施した迎撃実験は「FTM-44」という名称が付けられています。その概要は、同局のサイトで公開されています。実験シナリオも公開されていますが、距離や時間経過は実際のものとは異なる概念アニメーションです。

 これによると、南太平洋のマーシャル諸島・クワジェリン環礁にあるロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛実験場からハワイ北東の海域にICBM模擬ターゲットが発射され、イージス搭載のアーレイ・バーク級駆逐艦ジョン・フィン(DDG-113)が発射したSM-3によって迎撃されました。