「逆求人」を実施すると、どのようなメリットがあるのだろうか

 ここまで、学生・求職側の利点を多く紹介してきたが、「逆求人」には企業側が得られるメリットもある。

●企業側が得られる「逆求人」のメリット

・採用確度の高い学生と接点を持てる
「逆求人」では、企業が、求職者や学生一人ひとりのアピールポイントを確認した上で、それぞれにピンポイントで声を掛けることができるのが最大の利点だ。大きな母集団の中から自社のニーズにフィットする人材が現れるのを待つよりも、企業側から「これ」と思った人材にアプローチできる。

 また、アプローチの際も、より踏み込んで自社がその対象者を必要としている理由をしっかりと求職者・学生側に伝える機会が得られるため、心に届くコミュニケーションを取ることが可能だ。採用条件に合致した人材に出会える確率は高まり、採用確度の高い人材を無駄なく採用できるチャンスが大いにある。

・自社を知らない学生にもPRできるチャンスになる
「逆求人」では、企業側からさまざまな学生に声を掛けることができるので、まだ自社を知らない人材やこれまで関心を持っていなかった層にも自社をPRできる絶好の機会だ。また、「逆求人イベント」といったものもあり、そこでは自社の求人にフィットしそうな学生と1対1で面談することもできる。採用面接一度きりでは垣間見ることができない学生を多面的に把握する機会にもなるだろう。

 自社の採用条件に合致する人材に対して、近い距離でアプローチできたり、内面も見る機会が得られたりする点は、「逆求人」の大きなメリットだといえる。学生側としても、最初のうちはその企業に興味がなかったり知らなかったりといった場合でも、熱心で丁寧なアプローチを受ければ、就職先として志望する可能性は高くなる。

・時間や費用といったコストをカット
 これまで行われてきた採用活動の場合、企業それぞれが「会社説明会」を開催したり、採用募集の広告を出稿したりしなければならなかった。時間も経費もかかり、そのコストは決して低いものではない。「逆求人」の場合、前述の「逆求人サイト」の利用や、「逆求人イベント」、「逆求人フェスティバル」への参加で採用活動を行えるため、コストを抑えることができる。また、業種別のイベントに参加すれば、自社に合った働く意欲の高い学生にピンポイントで出会える確率も高まるだろう。

 ただし、コロナ禍によってリアルイベントの開催はかなり減少しており、新しい生活様式に適した方針も考慮しなければならない。「コロナ禍だから」と諦めず、オンラインでの実施など、学生との接点を減らさず、低コストで最大限の効果を得るにはどうしたらよいか、企業内で対策を立てる必要がある。

●学生や求職者側が得るメリット

・今までチェックしていなかった企業を知ることができる
「逆求人」を活用することで、意外な企業からオファーが来る可能性があり、自分が知らなかった企業と交流することができる。また、オファーが来たということは、その企業が、自分の経験やスキル、ポテンシャルに関心を寄せているということだ。こういった企業を就職先に選ぶことは、「入社後のミスマッチ」の予防になり、学んだことや得意分野を活用できる可能性が高い。

・自力では限界がある選択肢を増やせる
 自力だけで知ることができる企業の数には限界がある。特に、社会経験のない学生が、自分に本当に適した企業を見つけ出すのはとても難しいことだ。客観的な視点が持てず、「自分に向いているのはこの業界(企業)だ」という思い込みで就活を続けている学生も少なくないだろう。志望先を絞り、一直線に頑張ることは一概に悪いことではないが、まずは志望する業界や企業を絞らずに、視野を広くしていろいろな企業を見ることも大切だ。逆求人を利用することは、そのための最適な手段である。

・自己発見や自己成長の機会を創出できる
「逆求人」では、従来の就職・転職活動よりも求職者側の積極的な自己アピールが求められる。そのため、否応なく「自発性」が育つ環境に身を置くことになる。例えば、企業からたくさんのアプローチを受けるには、自己アピールがどれだけできるかが鍵となる。企業の目に留まるような「プロフィール」や「自己PR」を自発的に発信しなければならない。プロフィールは自分の価値を表現する場だ。企業が判断材料に使用するプロフィールを魅力的なものにするには、「過去の経験の棚卸し」ができていなければならない。企業からのオファーを内定につなげるには、「深く分析した上での自己アピール」が必要なのである。この「プロフィールを作り」の過程で行った「自己分析」によって、自分自身の強みや弱み、価値観、アピールポイントを知ることができ、就活後の社会人生活にも役立てられる。

・事前に社会経験を積める
「逆求人サイト」を利用する場合は、有給の長期インターンシップや就活イベントのオファーが届くことがある。実際に社会経験を積むことで自己成長を促す機会にもなるので、将来のキャリア形成のために早くから準備したい学生には、良い手段となるだろう。インターンシップやイベントへの参加によって、社会の実際を体験し、これまで見ていなかった自分の強みや弱み、仕事をすることの厳しさ・楽しさ、やりがいを見出したりもできる。本格的に就活がスタートする前に、こういった自己発見や自己成長の機会を持てるのは貴重な機会といえる。