社員と企業にWin-Winをもたらす社内副業

 このような状況下で社員の人達の中には、今の状況を危惧して転職や副業などを考える人達もいることでしょう。ただ、転職に関しては転職先でうまくやっていけるかどうかというリスクもあります。かといって副業に関しては、やはり経営者の立場からすると「他の会社に使うエネルギーがあるのならうちの会社で使って欲しい」というのが本音でしょう。

 そこで、これからの時代に両者の課題を解決する手段として「社内副業制度」という概念を私は提案しています。どのような職種でも繁忙期とそうでない時期があると思います。例えば、総務人事であれば新卒採用業務を社内で手伝ってくれる人を公募し、働いてもらった分を手当として支給します。経理であれば経費精算の精査を公募してもいいかもしれません。内部統制や個人情報などの漏洩にも配慮しながら、繁忙期にその部が残業していた作業を社内公募して「社内副業」としてまかなうのです。

 特に今年は残業代が減った方も多いと思います。社員の中で「もう少し稼ぎたい」という人は社内副業制度に応募して収入を増やすことができますし、手伝ってもらえる人は反対に残業時間が減り、早く帰れます。また経営者も社内副業であれば不満はないでしょう。むしろ部をまたいで社員が協力をして作業をしてくれることは嬉しいはず。

 社内で起こる繁忙期の各部署の仕事、新しい仕事、突発的な仕事に、効率良く時間の空いている社員を社内公募して配置することで、限られた人材でより多くの作業がまかなえる生産性の高い組織になるのではないかと思います。会社側は今まで繁忙期や臨時作業、新規事業のために人を雇っていた給与分を、手当分程度でコストを節約することができます。そして社員自身も、こっそり慣れない生産性の低い副業をするよりも、お互い顔を知っているメンバーの元で堂々と副業が出来、手当がもらえるほうが有難いはずです。

 いま厳しい環境下ではありますが、このような時だからこそ思い切った施策もできるはずです。皆さんもこれまでの常識や慣例にとらわれない斬新な施策や働き方を考えてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

流創株式会社 代表取締役 経営コンサルタント/作家 前田 康二郎

数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書は『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』のほか、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』『経営を強くする戦略経理(共著)』、『スピード経理で会社が儲かる』、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』など多数。節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)も運営している。また、2020年6月26日に新著『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』が発売された。

 

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