(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)
米WTI原油先物価格は年末に入り1バレル=40ドル台半ばで推移している。
1バレル=60ドル台だった年初の原油価格は、新型コロナウイルスのパンデミックとサウジアラビアの掟破りの生産拡大により、マイナス40ドルにまで急落するという異常事態に陥った。しかし、その後OPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの大産油国)の史上最大規模の減産により、現在の水準にまで回復している。振り返れば、アップダウンの激しい1年だったが、まずは供給サイドの動きから見てみたい。
世界の在庫過剰が続く中、協調減産幅を縮小
現在、日量770万バレルの協調減産を実施しているOPECプラスは12月3日、「来年(2021年)1月から減産規模を同720万バレルに縮小する」ことで合意した。
当初の予定では「来年1月からの減産規模は日量580万バレルとなる」予定だったが、足元の原油需要が軟調であることから、サウジアラビアは「減産規模を同770万バレルに据え置く」ことを主張していた。しかし、「欧米で新型コロナワクチンの接種が始まる」との報道を受けて原油価格が急上昇したことから、ロシアなどがサウジアラビアの方針に反対した。このため、12月1日のOPECプラスの会合では結論を得ることができず、同3日になってようやく合意が成立するという難産だった。
今回のOPECプラスの決定は来年1月の減産規模のみであり、来年2月以降の減産規模は未定である。「1カ月当たりの縮小量を日量50万バレル以下にする」とのルールを設定したのみであり、実際の減産規模は月毎に決定することになる。
OPECの足元の原油生産量を見てみると、11月は前月比75万バレル増の日量2531万バレルとなった。内戦状態にあったリビアの原油生産量が前月比70万バレル増の日量125万バレルになったことが主要因である。